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2012年5月

2012/05/23

古くて新しい『CHIANTI RUFINAキャンティ・ルフィナ』 は新世代のワイン

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先日たまたま日本の某ワイン誌上で、今おススメイタリアワインと
いう特集を見る機会がありました。そこには北から南までの有名イタリ
アワインが解説付きで出ていたのですが、ざっと読んでの感想は「へえ
ーいまだに90年代に流行したワインがもてはやされているんだ」ということ。
20年前にアメリカ市場で一世風靡した高額イタリアワインがそのまま
最近のワイン専門雑誌に”今注目のおススメワイン”として取り上げられて
いるんですね。同じような内容の記事が過去に何度あったでしょうか。
ワインはもちろんファッションと違い、ころころとその流行が変化する
ものではないし、本当にいいワインはいつの時代もその価値が変化
するものでもなく、もちろん90年代に登場したワインが全部駄目という
ことではないのですが、バブル時代に一世風靡したある種のワインは
イタリアワインの中でも、大きく見ると実は偏ったカテゴリーに属している
ワインであり、輸出向け、アメリカ向けにつくられた人工的なワインが
多いということが言えます。

90年代の世界的な経済成長時とイタリアワインブームのときには競って
フルボディーで華やかさ満載のワインが各地でつくられて、ヴェルサーチ
やアルマーニのスーツとともに世界中に洪水のごとく高級品として輸出さ
れていました。伝統的な大樽造りをやめバリックで熟成したモダンなワイン
を造ったり、過酷なバトナージュでマロラティック発酵を強制したり、加酸や
加アルコールしているワインまであり、それはそれは濃いワインが売れた
時代でした。過去に90年代ほど人工的なワイン造りを行っていた時期はな
いのででしょうか。90年代中ごろに全国のワイナリーをかなり訪問しましたが
ワイナリーのオーナーが得意げにバトナージュや電力で回転させるバリック
樽など新しい醸造機器を自慢気に見せてくれたのを覚えています。そんな
ワインが20年後にもまだ話題の中心になっていることにちょっと首をかしげ
るのです。これらのワインは濃すぎて料理にあいにくい上、高額で普段飲み
はできないというハンディもあります。そんなところにまた時代遅れの風を
感じるのですが日本の雑誌だけでなく、イタリアでもいまだにこれらのワイン
ばかり集めた試飲会があったりします。
今は自然派ワインが勢力を増して、イタリアではいろいろな自然派団体や
自然派ワイン専門の酒屋などもあちこちに見かけるようになり、これも
一つのイタリアワインの動きと言えると思いますが、今日はそれとはまったく
別で本当に久々に新鮮な新しいワインの風を感じました。

ローマの老舗酒屋『TRIMANI トリマーニ』のオーナー、パオロ・トリマーニ氏と
ワインジャーナリストのジャンパオロ・グラヴィーナ氏による『キャンティ
ルフィナ』の試飲会。会場は市内中心部にある大統領官邸からすぐ近くの
VILLA SPALLETTIヴィッラ・スパレッティ』という1900年代の貴族の館を改装
した緑豊かな隠れ家的レジデンスホテル。

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『キャンティ・ルフィナ』というワインはDOCGですが『キャンティ・クラシコ』
の影に隠れてあまり知られていないといえるかもしれません。
でも15世紀には『ルフィナ』として生産されていた記録がある歴史の古い
ワインです。
『キャンティ・クラシコ』のブドウ栽培総面積が70,000ヘクタールに比べ
『ルフィナ』はたったの750ヘクタール。約100分の1です。この小さな
地域の中にたった22社の生産者が『キャンティ・ルフィナ』をつくっています。
『キャンティ・クラシコ』に比べ『ルフィナ』は高地にあり大体200-250mt
中には標高500mtのワイナリーもあり、味わいにミネラル感の高いのが
特徴。フィレンツェの北東側、ほぼアッペンニンニ山脈のふもとに位置します。

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ルフィナの全22社の生産者のうち8社の12種類のワインをティスティング。
2010年から2008年ヴィンテージです。

1)I VARONI CHIANTI RUFINA DOCG 2010

2)FATTORIA DI GRIGNANO CHIANTI RUFINA DOCG 2010

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3)SELVAPIANA CHIANTI RUFINA DOCG 2010

4)VILLA TRAVIGNOLI CHIANTI RUFINA DOCG 2009

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5)COLOGNOLE CHIANTI RUFINA DOCG 2009

6)FRASCOLE CHIANTI RUFINA DOCG 2009

7)IL POZZO CHIANTI RUFINA RISERVA DOCG 2008

8)I VERONI CHIANTI RUFINA RISERVA DOCG 2008

9)FRASCOLE CHIANTI RUFINA RISERVA DOCG 2008

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10)COLOGNOLE DON CHIANTI RUFINA RISERVA DOCG 2008

11)CASTELLO DEL TREBBIO LASTRICANO CHIANTI RUFINA
RISERVA DOCG 2007

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12)SELVAPAIANA VIGNETO BUCERCHIALE CHIANTI RUFINA
RISERVA DOCG 2007

写真付きのは得に素晴らしいかったワイン。
全ワイナリーの生産者が来ていて、彼ら一人ひとりによる解説もあり
なんとも贅沢なティスティング会だったのですが、このあたりも『ルフィ
ナ』的。地域に生産者が少ないため、みんな家族みたいに仲がいいの
です。『ブルネッロ』の組合はいろいろもめてたっけ。。。
またルフィナのワイナリーのオーナーはほとんどが地元のトスカーナ人。
他のトスカーナワイナリーのようにアメリカやイギリス企業の資本が投資
されていないのもまたいいのです。

さてキャンティ・ルフィナとそのリセルヴァを試飲したのですが、何に感動
したかというと、そのすがすがしい飲みやすさ。
キャンティ・クラシコやロッソ・ディ・モンタルチーノは発売されてすぐの
ビンテージは酸が立ち、タンニンも重く、まだワインが硬いというのが

多く、その先にどうワインが成長していくか、その何年も先の飲み頃を想像
して飲むワインが多々あります。2010年や2009年ビンテージのキャンティ
やロッソ・ディ・モンタルチーノのテイスティングでは「今はまだ硬いけどあと
2,3年したらかなりおいしくなると思う」というようなコメントを耳にしますが
あれって何の意味があるのでしょうか。
消費者の中に酒屋で数千円で買ったワインを数年ねかして飲む人はどれ
ほどいるでしょうか。ボルドー、ブルゴーニュ、一部のイタリア高級ワインなら
わかるけど、ベースワインで数年後においしくなるワインって何かが間違って
いるような気がする!というのをこのルフィナを飲んでしみじみ感じました。
『ルフィナ』のサンジョベーゼのやさしい口当たり。アルコールがドロリとグラスの
内側に弧を描くことなく、紫のインクをなめたように唇を染めることなくスーッ
と山からの湧き水のごとく体の細胞にしみこんでいく透明感のある液体。
木苺や苔の芳香とミネラル感あふれる味わいがなんとも至福感を与えてくれ
ます。

この中には”自然派”と呼べる栽培・醸造をしているワイナリーもあれば
そうでないワイナリーもありましたが、ビオかどうかというのにはあまり触
れずに、それよりも全社が一貫して伝統的な大樽での熟成を大切に守っ
ていると言っていました。
昔のままの造りを守り、自然派の枠にもとらわれず、リリースした年が飲み頃
のワイン。難しいことを考えずに芳香に誘われスイスイと飲めるこの爽快さ。

また価格もトスカーナワインにしては安いので、普段にも十分飲めるという
のもポイント高し!さらには魚料理にもあわせられるような透明感のある味わい
で幅広く楽しめるのもいいところ。
そんな、いうことなし!の『ルフィナ』でしたが唯一欠点をあげるとすれば組合が
海外プロモーションにやる気があまりないこと。こんなに歴史があって、おいしい
ワインもマーケティングが上手なほかの地域の組合に大きく遅れをとって
日当たりが悪いところにいるのです。
でも今日の試飲会では確かにレストランなどの飲食業者やジャーナリストも新鮮な
驚きに包まれていました。「なぜかワインについて難しい味わいの想像を
したり、分析することがいつの間にか普通になっていたが、このティスティングで
そんな必要性は全くないということが証明された。」と言った人が
いてみんなの共感を得ていました。

ボルゲリ、カルミニャーノ、ヴィーノ・ノーヴィレ、キャンティ・クラシコにブルネッロ。
トスカーナのワインはいろいろありますが、その中でも一番やさしい『ルフィナ』。
1762年の記録に「トスカーナでワイン造りに最も適した土地、それはルフィナ
である。」というトスカーナの大貴族メディチ家のコジモ3世の言葉が残って
います。
流行も派閥も関係なく何百年も評価されている『ルフィナ』。
何かいいことを発見した気持ちで一人でウキウキしながらヴィッラをあとにしました。

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CONSORZIO CHIANTI RUFINA

キャンティ・ルフィナ生産組合

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2012/05/03

ワインのへそのう

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ローマ旧市街のカンポ・ディ・フィオーリ近くにある小さなワインバー
『L'ANGOLO DIVINO ラアンゴロ・ディヴィーノ』へ。
木目調の素朴なインテリアのけっこう昔からあるワインバー。
食事もできます。
オーナーのマッシモさんはオタク系イタリア人。(イタリア人といえば
”陽気であっけらかんとした性格”というのがステレオタイプですが、実
はけっこう根クラなイタリア人って多いのです。)
マッシモさんは日本にいたら自家製焙煎コーヒーの喫茶店かこだわり
の蕎麦をうってそうな人。気難しいのが一目でわかるのですが、ワイン
の話になるとイキイキと語りだし「あ、笑ってる笑ってる」とこちらもニヤ
ニヤしてしまいます。
そんなマッシモさんのワインリストはやっぱりオタク魂炸裂の自然派ワイ
ンが満載。

なかなかローマでみない、でも大好きなGIUSEPPE RINALDIジュゼッペ・
リナルディの『LANGHE NEBBIOLO2009』を見つけ、即効注文。22ユーロ。
リナルディは1890年からピエモンテのバローロ村で昔のままの手法で
ブドウ栽培、ワインつくりをしている希少な生産者。
彼のバローロは銘酒の中の銘酒で、自然派ワインの枠を超えた崇高さが
あります。リナルディのワインを飲むたびに「こんなすごいワインどんな
人が造っているんだろうなー、会ってみたいなー」と心がしめつけられる
想いがあるのですが、ピエモンテにお住まいのぶじゃねんさんのブログ
で愛車のランブレッティに乗っているリナルディさんを見ることができました。
巨匠というよりなんか想像通りのステキな人で、しかも大好きなロゼ『RO

SAE ロザエ』の心に響く意外な由来まで知って1人心あたたまりました。

そんなリナルディのワインについて、今度は日本のブログを調べて
いたら、ちょっと驚きのブログをたまたま発見。
それはリナルディのワインが全国ファミレスチェーンにあり大変にがっがり
したという話。これはたしかに目を疑いました。ショックの一言。で、この人

の考察は辛辣かつ的を得ているなーフムフム、と興味深く読んだのですが
さらにまたまたおもしろいブログがでてきました。それは、このブログを
読んだ人のブログで、リナルディのワインがファミレスにあったことを批判
するのは「まったく的外れで、ブランド物のことになると途端に原理主義者
に変貌する人がいるようだ(疲れる)」という内容。

さて、リナルディのワインがファミレスで出されるということはどういうことか。
それはこの写真をみてください。

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マッシモの店で『LANGHE NEBBIOLO2009』を注いでいたら、最後の
ほうにボトルからニュルっとでてきた黒い長ーい物体。一瞬虫が出てき
たと思い「キエー!」っと叫ぶ私。20センチ以上の長さ!
「ワ、ワ、ワインのへそのうが出てきたぁ!!!」と叫ぶそのこ。

自然派ワインだと、よくワイン本来の風味を失わないために一切フィル
ターにかけずに無濾過でボトリングします。そのためボトル
の底にカスのようなものが沈殿していることがあります。それはワインの
中に含まれるタンニンやポリフェノール、色素などで、白ワインでも酒石
酸や酵母菌が結晶化したものが沈んでいることがあります。もちろん無害。
でも、こんな1本の長ーいひもみたいなのは初めて。
マッシモも「うん、うん」とこの生き物のような不思議な物体をうれしそうに
眺めながら、みんなにこれはタンニンやポリフェノールのかたまりでたまに
長くなることもある、と説明してくれました。”ワインのへそのう”とはよく
言ったもので、本当にへそのうでもついているかのような生命力のある
それはそれは素晴らしいネッビオーロでした。

これ、日本のファミレスで同じことが起こったとしたら。。。
というかリナルディのワインであればすでに起こっていたりして。
マッシモみたいにちゃんと説明できる人はいるのでしょうか?

いろいろ想像しただけで怖くなるのは私だけでしょうか???

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L'ANGOLO DIVINO 
ラアンゴロ・ディヴィーノ

Via dei Balestrari 12

Tel 06 6864413

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