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2016年7月

2016/07/11

グラード湾に浮かぶ魚料理の店『TRATTORIA AI CHIODI トラットリア アイ・キオーディ』

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ちょっと前のことになってしまいましたが、あまりにも面白い”食&出会い”
体験だったグラードでの話題。
グラードとはほとんど知られていませんが、イタリアの北東フリウリ・ヴェネツィア
ジューリア州の小さな湾を含む地域。
この湾には、島とも呼べない、地図にも載らない小さな小さな孤島がたくさん
浮かんでいます。昔は猟師さんが住んでいたそうですが、今は市が管理して
います。
この島々の1つがISOLA DI ANFORAアンフォラ島。
ここに”BORETO ALLA GRASIANA ボレート・アッラ・グラシアーナ”という
かなり変わった魚の郷土料理を食べさせるトラットリアがあるのです。

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グラードの港から水上タクシーで30分でアンフォラ島に到着。

ありました=!『TRATTORIA AI CHIODI』!

ほんとうにこんなところにそんなレストランがあるのか?!と半信半疑に
なっていたのが、この島へのエントランスを見たとたんテンションアップ!

厨房はオープンになっていてテーブルは野外のみ。
そのすぐ横は海。
よく見ると地元の船乗りのおじさんや、猟師さんっぽい若者が、ビールグラス片手
にイカのフライや魚介のパスタをほおばっている光景が!
イタリアに浮かぶ小さな島というと、高級リゾート地になっていてお金持ち
バカンス客向けのレストランばかりというパターンが多いのですが、ここは
客層もなんだか違うぞー!

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この湾岸で獲れる魚介を地元のお母さんたちがさばいて、厨房で揚げたり
いためたり。それをすぐにテーブルに運んできてくれます。
それを生ビールか白ワインで。こりゃ魚好きにはたまらない!

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さて、はるばるこの島に来たのは実は目的がありました。
それは、この地方の郷土料理 ”BORETO ボレート” を食べること。
この島に来る前にフリウリ州ゴリツィアにあるワイナリー訪問で
東京の出張料理人の岸本恵理子さんとの出会いがありました。
恵理子さんは3年前にこのお店に来てこの魚料理に魅せられ、レシピを習得
なんと東京に帰ってからも”BORETOの会”を開催されているのです!
その恵理子さんの提案で急遽この島に来て、BORETOを食べることになった
わけです。

では、そのBORETOの作り方をご紹介しましょう。

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まずはこの鉄鍋(この取っ手のある鉄鍋が伝統的な形)にニンニクを入れ
もくもくと煙りが出るほどいためます。油はほんのちょっーと。
いつまで炒めてるの!!!と言いたくなるほど真っ黒に焦げるまで放って
おきます。

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ここへ頭からぶつ切りにしたいろいろな魚を放り込みます。
ここに文字通り大量の黒コショウを入れます。
半端な量じゃなく、手にいっぱい握ったのを2回分入れてました。
塩は普通の量。

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さらに、なんと魚がひたひたになるくらいのワインビネガーを入れます。

これで30分ほど煮込みます。絶対にヘラで混ぜてはいけません。
魚が崩れてしまうので動かさずこのまま放っておきます。
しかもずっと強火!えーーー!

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魚から出る出汁がお酢に溶け込んで白いスープのようになってきました。
ここでまた面白い独特のパフォーマンスが!
この取っ手を持って左右に鍋をフリフリするのです。
ヘラを使わずにこうやって混ぜるのですね。

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できましたー!!!
これ、どんな味だと思います?
作り方を見ていると、かなり味の濃い料理だろうなーと想像していたのが
なんともまろやかで、ツンツンしたお酢の感じもなく。お、おいしい!!!

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黒オリーブなんか入れてたっけ?と思ったら大間違い。これがこげこげの
ニンニクだったんですね。
でもニンニクも黒コショウもお酢も、全部が柔和されて魚の味を全く殺して
いないのには驚き。

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そして魚と一緒に焼いた白ポレンタを食べます。これも含めBORETOなのです。
この白ポレンタ、焼きおにぎりとそっくりの味で、なんだか和食を食べているような
感覚でした。
さて、それにしてもなぜこのような作り方、つまりお酢やコショウを大量に入れて
煮込むのか?イタリア各地にある魚料理に比べても、これはかなり変わった料理です。
料理の由来をオーナーに聞いてみました。

- 昔はあまり新鮮な状態で魚が手に入らなかったこと。
- この地域ではオリーブオイルが生産できず、貴重品だったため油を使わない
料理が考えられた。
- 昔は今のように前菜、パスタ、セコンドという食事ではなく、ワンプレートだけだった
ので1皿で味の濃い、お腹の膨れるものを食べていた。

ということでした。なるほどー。やはりそういう食事情の背景があったのです。

イタリアに20年いても知らない料理がまだまだある!と思わされるのはこういうときですね。

で、こんなたくさん食べられるのー?!という量でしたが、一緒に行ったみんなで
最後のソースを白ポレンタでスカルペッタするまで食べました。
BORETOの独特の味わいは、何か脳裏にしっかりと焼きついて忘れられない
おいしさでした。

そして何より忘れられなかったのが、この料理に3年ぶりに再会した恵理子さんのこと。
BORETOが出来上がった瞬間、子供みたいに飛び上がって喜んでいた恵理子さん。
魚だけで食べたとき、ポレンタと一緒に食べたときの違いを比べ、真っ黒
にこげたニンニクまで、全てを真剣に味わって感動していた恵理子さん。
作るプロは食べるのもプロですね。
いろんなものをほおばっている恵理子さんを見ているこっちもシアワセいっぱい
になりました。

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BORETO以外にも、いろいろな魚料理があり、お腹がはちきれるまで制覇しました!
全てがおいしく、そこにいた皆の食べているときのテンションの上がりようが
また面白かった!

こんな遠方から来た人に感動を与えられる郷土料理を頑固に出し続けるお店
無名の地の地元料理に惚れこんで、日本でも伝えようとする情熱料理人。
食べることに対するみんなの欲と真剣さ。

お腹もいっぱい、感動もいっぱいでこの島を後にしました。

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TRATTORIA AI CHIODI  トラットリア・アイ・キオーディ

Isola di Anfora, Grado, Gorizia

TEL. +39-335-7522209

毎年4月から10月中旬のみ営業

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2016/07/04

新奇コンセプト満載の店『RETROBOTTEGA レトロボッテーガ』

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昨年12月、ローマの中心地にオープンした『レトロボッテーガ』。
最近のマイブーム、久しぶりの大ヒット、完全にはまってます。

ローマの2ッ星イノヴェーティヴイタリアン『イル・パリアッチョ』の厨房で長年
同僚だったロ・イウディチェ氏とミオッキ氏が2人で独立、ハイレベルな料理が
居酒屋感覚で食べられるというなんとも画期的なお店。

「ファーストフードから3ツ星まで、カウンターで食べるスタイルが主流の日本の
飲食店は、客と客、客と料理人の会話が生まれ、ヨーロッパの区切られたテーブル
席の空間とは違い、インフォーマルな空気感がある。それが自分たちのコンセプト
にぴったり合ったんです。」というロ・イウディチェ氏。
1ヶ月かけてまわった日本の飲食店を参考にし、店内はL字型のカウンター
を中心にした内装に仕上げています。
カウンターの向こうには、パスタを打ったり、お皿に盛り付けをする料理人たちの
手仕事が見えます。

ワインや水などのドリンクは客が自分で店内の冷蔵庫から取り出すようになって
いて、ワインも自分であけます。コーヒーもマシンが置いてあり、飲みたい人は
ご勝手に。
人件費の高いイタリア、彼らはホールスタッフをほとんどおかず、できるだけ
セルフサービスにしているのですが、このスタイルもまた客ウケしているのです。
そしてワイングラスはよく見るとプラスチック。

厨房の中を眺めていておもしろいのが、それぞれパートが違うスタッフ達が
「もうすぐパスタが茹で上がるぞー」とか「ソースはできたか?」などお互い声がけ
することなく、確認しあうことなく、1テーブルからの複数の注文をピッタリと同時に
仕上げていること。
相手の様子を見て把握しているのか、これはすごいワザ。チームワークの極み!
またどんなに満席になろうが、厨房の誰一人慌てることなく、淡々と手だけを
動かしていること。とにかくすぐ口が出るこの国民性からして、なんどもクールで
平和な空気が流れているのです。
イウディチェ氏が29歳、その他スタッフもみんな若いのに騒がしくない!
すごいプロフェッショナルな仕事ぶりなのです。

お任せコースもありますが、黒板に書いてある日替わりメニューの中から
アラカルトで注文。

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まずはアミューズから。
石の上にちょこんと。

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アンティパスト、バッカラとネギ、ジャガイモのピュレ。
素材の使い方といい盛り付けといい、星付レストランのキャリアが
出てますね。
低温調理+グリルにしたネギの甘味と、決して塩辛すぎないバッカラ
自家製マヨネーズ、全てのハーモニーにうっとり。

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こちらもアンティパストでウサギのサラダ。
ウサギは苦手な私もこれは食べられました。
赤いソースはパプリカ。
そういえば冷たいウサギ料理って始めて。熱いウサギ料理よりも
上品な味わいで驚き。

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胸腺肉のフライ。これもアンティパストから。
白いのはブルーチーズのクリーム。

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アルソというプーリア州の小麦のパスタ。このパスタ、弾力があって
病みつきになる食感。ちょっと蕎麦に似ています。
ムール貝とボッタルガ添え。

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ポルチーニ茸と、つぶ貝のカヴァテッリ。
山と海の香り両方が楽しめる一品。
このパスタももっちりしていておもしろい食感。

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そして今日のヒットはこれ。
スパゲッティー アーリオ、オーリオ、ペペロンチーノ。
パスタの茹で具合といい味わいといい、一口食べて唸りました。
おいしすぎ!

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おまけ。
タコとトマト、ボッタルガのおつまみ。
メニューにはなかったのですが、ワインに合わせて即興で作ってくれました。
さすがの一言。

どのお料理もしっかりお皿を温めているところ、ピッカピカになるまできれいに拭き
一点の曇りもない状態で盛り付けているところ、などなど星付レストラン的な
完璧な仕事ぶり。

いつ行っても満席ですが、予約は受け付けていません。
テーブル席もありますが、断然カウンターが楽しいのでちょっと時間帯をずらして
行くのが常連ワザ。
12時から深夜までノンストップ営業で、夕方などでも食事ができます。
月曜定休。

新奇コンセプトもおもしろいけど、何より料理がとにかくおいしい店。
オ・ス・ス・メ!!!

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RETROBOTTEGA  レトロボッテガ

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